落語業界目線で考える…ご当地落語の凄み

この記事は17分ぐらいで読めます♪読み応え十分!どうぞお付き合いください^^

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無茶振り企画のはずだったご当地落語

落ち着いたところで振り返ってみます。

3世代でもラクラクのバリアフリー旅、
そして家族で落語を楽しんでほしい…
鈴の宿 登府屋旅館の 遠藤直人(@naaot)です。

2021年、コロナ禍の日本で落語家と観光事業者が手を組み、作り上げた「ご当地落語」。

5温泉地を巡り、24席の新たな落語が生まれたこの企画の意味を改めて考えてみたいと思います。

新たな発想がオンラインで披露されていく

当初は、「3日で落語はできるのか?」という無茶振り企画を実現する意図が大きかったご当地落語。

無茶振り企画ではものたりなくなった

ですが、初回の小野川温泉で新たな4席の落語ができた時点で「果たして3日でできるのか?」から「できるもんだね。しかもこんなにハイレベルで。」となりました。作家さんと落語家さんのプロの技術のおかげです。
逆にいえば、「3日で落語ができました!」では、次の温泉場は物足りなくさせてしまうほどの技量でした。

その後は、無茶振り企画としてではなく、落語業界でも類を見ない取り組みとして、温泉地をめぐるごとに次々と変化を遂げいきました。

流派を超えた連携

まず、メンバー構成が斬新でした。

初回の小野川こそ、落語立川流のメンバーが多めでしたが、その後は、落語協会、落語芸術協会、三遊亭円楽一門会、桂米朝一門と東京の4派だけでなく、上方からも参加しました。

とはいえ、流派を越えるのは若い世代では当たり前になってきており、同じ落語会に出るのは珍しいことではありません。
ここでのポイントは、多くのメンバーがコロナ禍で始まったオンライン大喜利でつながったメンバーである点。

家からでも参加できるリモート大喜利企画に自ら立候補して集まった落語家のみなさん。なかには初対面もいらっしゃいました。そんなルーツの違う面々が、3日で落語を作り上げる旅一座のメンバーになりました。

稽古会での流派を超えたやりとり

初回の小野川温泉で偶然生まれ、その後、ずっと続き、岳温泉では2回も行われたのが、「稽古会」です。

まだ完全にできていない中で、一旦メンバーの前でやってみてアドバイスをもらうという場でした。

初日、2日目の取材で同じものを見て同じ体験をしているからこそできるアドバイス。
流派や階級を超え、それぞれがアドバイス。
二ツ目からのアドバイスをもとに真打が内容を変更したこともありました。

稽古会を起点に、ご当地落語は毎回確実に磨かれていきました。

男2人の素が見える「ふろトーク」

2回目の土湯温泉から生まれたのが、ふろトーーク。

初対面もあり、同期もあり、作家と演者もあり、さまざまな2人がトークをしてくれました。

普段は見れない関係性の中での「素」の部分。

お風呂での裸の付き合いが、チームとしての一体感をより強固にしたのは、間違いありません。
特に、落語家さん向けに作品を書いていた作家さんたちは、落語家さんをよく知るきっかけになったと思われます。

追いきれないほどの情報量

今回の企画において、本番の落語会だけは、ツイキャスで有料配信でしたが、そのほかは全て無料でした。
ありとあらゆるSNSで発信されていきました。
ツイッターが核となり、インスタグラム、ツイキャス、ユーチューブなどなど。

小野川温泉のツイートまとめ
まとめもあります。

ネット公開された中には本番での材料が含まれているので、できれば、事前に見ておきたいという追う側にとってもうれしい悲鳴な企画でした。

毎日の振り返りを生配信で報告

夜9時前後に行われていたのが、毎日の「振り返り配信」。
ツイキャスで行われていました。
その日何をしていたのか、どんなことがあったのか聞ける上、視聴者はコメントで参加できました。

この中で日々の報告以外に生まれたのが、「出番会議」「ネタだしブレスト」「ネタ取りドラフト」など。

出番会議では、本番の落語会では、どんな順番で誰があがるのかが公開で話し合われました。
誰が何番目をやりたいのか、どういう流れの会にするかまで、普通は見れない話し合いが公開されました。

特に、岳温泉でトリに柳家緑助さんが立候補した瞬間は、コメント欄でファン全員が歓喜と感動を伝えたほど。

「ネタだしブレスト」では、みたり聞いたりしたものの中から落語に使えそうなネタを全員でアイデア出し。
さらにその中からやってみたいネタを取り合う「ネタ取りドラフト」へつながりました。

落語が生まれるプロセスを生で見れるのは、ファンとして垂涎の瞬間でした。

毎日のまとめを動画でレポート

小野川温泉では、立川こしら師匠が、それ以降は柳家緑助さんが担当したのが、「まとめ動画」。

みんなでワイワイの振り返り生配信と違い、現場にいる緑助さんが、独自の視点で撮影し、編集しています。
ファン代表のレポーターの役割。

緑助さんの編集スキルの向上も見どころでした。

毎日の食事や打ち上げまで「もぐもぐ配信」

これまたファンが喜んだのが、「もぐもぐ配信」。

温泉地に滞在していたご当地落語では、食事は旅館や温泉街のお店で食べます。

旅先にどんなお料理が待っているのか?旅館の食事はどんな感じか?
テレビの食レポのように無理な誇張もなく、素の食事風景を配信していました。

また、食事や打ち上げでの素の会話も見どころでした。
本番の落語について、作家目線での講評など、さまざまな中身がありました。

なんのタブーもなく、すべてを公開した珍しい企画でした。

噺だけでなく構成も「作家との分業」

小野川温泉・土湯温泉には、ナツノカモ先生、芦ノ牧温泉には、讃岐好邦先生がいらっしゃいました。

通常は、新作落語は落語家が作ります。
今回は作家も帯同することで、創作と出演の分業が行われました。

キングコングの西野さんが絵本制作でもおっしゃっている通り、業界によっては分業をよしとしない傾向があります。
分業の是非はさておき、今回のご当地落語においてはどちらも行われました。

作家のいなかった赤倉温泉では立川こしら師匠と桂竹千代さんが複数の噺を手掛け、岳温泉ではそれぞれの落語家が自分で捜索しました。

分業により、落語家の稽古時間は作家の仕上がり時間に左右され、作家にはその分のプレッシャーがかかります。
制作は3日間といいつつも、ネタが豊富なのは2日目のインタビューであり、2日目から作家が1日で書きあげ、3日目から1日で落語家が稽古する場合がほとんどでした。

つまり、作家は創作に1日。
落語家も稽古に1日。

分業で時間的にはハードになりがちですが、立川こしら師匠曰く、作家がいた方がやりやすかったそうです。

特に、ネタがかぶらないように(異なる噺での回収も含め)作家が会全体を考えて作品を書いた方が、各自バラバラで書くよりも良かったそうです。

ちなみに、作家の創作は公式サイトの台本で、落語家独自の演出はツイキャスのアーカイブで見比べられます。

さらに、ナツノカモ先生は、ネタバレ注意としながら創作風景をインスタライブで配信していました。
作家がどうやって落語を作るのか?
滅多に見れない配信となりました。

作家のツイートを見ることで本番はより楽しめました。

インタビューも配信し、アーカイブ

ご当地落語は現地での綿密な取材がもとになって作られています。
その最大の核となるのが、地元キーマンへのインタビューでした。

1温泉地につき、5・6人のお話を伺いました。
落語家の皆さんの聞く力のおかげで大いに盛り上がったインタビューでした。

実は、ご当地落語だけでなく、このインタビュー動画も地域の宝になっていきます。
ユーチューブに残った動画で他の地域の方は地域の深い魅力を知るとともに、同じ地域の方も知らない話を知ることができます。

将来の古典落語が生まれた…かも

ご当地落語の表ミッションが、「現地取材のもと、3日で落語を作り、4日目に本番」であるなら、裏ミッションは「将来の古典落語を作る」でした。

台本の公開と著作権フリー

従来の落語には、「古典落語」と「新作落語」があり、新たな落語は日々生まれているものの、その噺は作者である落語家のもの。
勝手に無断で他人が使ってはいけませんし、教わった場合でも最後は作者の了承を意味する「アゲ」というステップを踏むものです。アゲを経て初めて「お客様の前でやってみてもいいですよ」となります。

ご当地落語では、全ての台本を公開しています。
しかも、著作権フリー。

台本の公開は、作家の段階の落語と演者が披露した際の落語の違いを楽しむ、という意味もありますが、他の方に演じてもらうという意味が大きいです。

ご当地落語 公式サイト

宿主賞の5作品は、ユーチューブで無料公開されてますので、台本と動画で手軽に稽古が可能です。
24席どのネタもアゲは必要ありません。
ツイキャスの有料配信を見れば、全ての落語を動画で稽古できます。

さらに、「姫ちゃん」については、立川こしら師匠の解説もあります。

そして、本番の落語会の数日後、寄席の根多帳にご当地落語が名を連ねました。

ここまで広がるとは、当初は思いもよらず、温泉地をめぐるたびに新たなコンテンツを生み出し、ブラッシュアップしつづけた落語家の皆さんの成果と言えます。
プロジェクトを育ててくださり、ありがとうございました。

もし今後、ご当地落語を口演された落語家さんがいらっしゃいましたら、「#ご当地落語」 をつけて結果をツイートしてくださいますと、ありがたいです。
ご当地落語、まだまだ何かありそうです。

 

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