どうなる?「泊食分離」。小野川温泉の場合
この記事は13分ぐらいで読めます♪読み応え十分!どうぞお付き合いください^^
国を挙げての「泊食分離」
国家プロジェクトっす。
3世代でもラクラクのバリアフリー旅、
そして家族で落語を楽しんでほしい…
鈴の宿 登府屋旅館の 遠藤直人(@naaot)です。
泊食分離とは、旅館業界に伝わる「一泊二食」。
これを分割して、食事は食事、宿泊は宿泊にしようという考え方。
夕食はいろんなところで食べれる方がいいでしょ?
というわけです。
先日、観光庁からの衝撃のニュースがこちら。
旅館業界「泊食分離」導入を=長期滞在客対応、モデル地区指定へ
まぁ、前から言われてきているので、別に衝撃でもないんですが…。
今までは、「1泊2食は悪習だ。泊食分離を」という話が多かったのですが、今回は「旅館は稼働率が低い。高めるために泊食分離を」になっていました。
稼働率だけ言われても…。
客単価は?
商売人目線からは、ちょっとチカラワザだなと思ってしまいますが、まぁこれもオリンピックを見すえた国策なので仕方ないっす。
国は国で、ホストとしての旗振り役。
現場との板挟みで、こう言わざるを得ないのかな、と。
泊食分離、小野川温泉ではどうなるか?
国策だからって、全てに当てはまるわけではないわけで。。。
だから、モデル地区を作ろう!というわけです。
もしも小野川温泉でやったら、どうなのか?
私なりに考えてみます。
泊食分離で、問題になるのは、どこで食べるか。
特に、夕飯。
小野川温泉なら、宿泊先以外だと3つのパターンが考えられ、それぞれメリット、デメリットがあります。
温泉街で食べる
小野川温泉の温泉街には、飲食店があります。
現在、ラーメン屋さんが4軒。
洋食屋さんが1件。
ラーメン屋さんは、定食屋に近いメニュー構成なのでご飯ものもあります。
▪メリット
・歩いていける
・お酒を飲んでも歩いて宿に帰れる
・宿で食べるより安く飲み食いできる
▪デメリット
・閉店時間が20時前後と早い
・団体など、多数での急な受け入れが難しい
・接待やデートでの「ここぞ!」という雰囲気になりにくい
そもそもどのお店もランチがメインで夜型ではありません。
泊食分離を本気でやるなら、何軒かは夜型への変更、もしくは、新たな飲食店の誘致などが必要かと思います。
繁華街に出かける
小野川温泉から車で20分くらいで米沢市内の繁華街にでられます。
米沢牛のレストランや、居酒屋など、選択肢は一気に広がります。
▪メリット
・お店の選択肢、メニューともに豊富
・価格も選択肢しやすい
・二次会など、長時間、過ごせる
▪デメリット
・タクシーや代行車など、往復8,000円程度の交通費がかかる
・往復40分程度の移動時間がかかる
・悪天候だと出かけにくい
これだと、繁華街に歩いていけるビジネスホテルが何軒もあるので、そちらと競合します。
交通費を払ってでも「温泉と和室がいい!」という方には選ばれますが、コストパフォーマンスでビジネスホテルが妥当かと思います。
他の宿に食べにいく
最後のパターンとして考えられるのが、こちら。
小野川温泉の宿は、どこも100名前後と小規模で、宿泊人数にあわせた会食場の作りになっているので、宿泊以外の方をどこまで受け入れ可能かわかりませんが。。。
▪メリット
・長期滞在でも料理がガラッと変わる
・「ここぞ!」という料理を選べる
・歩いて宿に戻れる
▪デメリット
・週末や繁忙期に宿側が受け入れ困難
・温泉街内での料理の人気が、わかってしまう
・お客さんを取られてしまうのでは?という不安(を持つのではないかな)
泊食分離ではなく、「素泊まり追加」でいいのでは?
どれも一長一短ありますが、「泊食分離」をうたうには、小野川温泉はまだまだ難しいと思います。
まずもって新たな飲食店など、夜の充実が必要です。
何より現場で感じるのは、一泊二食が悪いとは思えません。
小野川温泉の規模、条件の場合に、ですよ。
よく「日本の文化だからという建前で、単価が高い一泊二食を旅館側が固執し手放さない」という論調があります。
文化であるのは、確かにそうなのですが、田舎の温泉地に泊まる場合、一泊二食の方がお客様にとってもいいと思います。
なぜならば、急な仕入れができないから。
お店から離れている温泉地の場合、食材の配送は、昼前後に終わっています。
そこから仕込みしたりする。
夕方になって「料理追加して!」と言われても対応できないことが多い。
すると、早めにオーダーいただくしかありません。
すでに「一泊朝食付き(夕食なし)」「素泊まり(朝夕食なし)」でお泊まりのお客様も多数いらっしゃいます。
宿にチェックインしてから「これから夕食ってできますか?」という方がけっこう多いです。
おそらく「宿について、温泉街を見て、どこで食べるか決めよう」と思っていて、見渡した結果「旅館にお願い」になったのだと思います。
それが夕方だったりするともう間に合わず、お断りすることになります。
旅館の場合には、あらかじめ人数がわかるので、食材もスタッフも予約に合わせてギリギリで準備します。
飲食店の場合には、フタを開けてみないとわからないので、食材ロスを前提に、余計に準備します。
「旅館でも、もっと飲食店のようなその場でオーダー、その場で調理の対応を!」
というのは、別の意見でありますが、今回は置いておきます。
飲食店があまりなく、夕方以降だと動けなくなる田舎の温泉地ほど、一泊二食は、お客様にとっても妥当な選択です。
ただ、連泊をどうするかは別問題です。
今回は、「宿泊単価を下げて、稼働率あげて、外国人受け入れを増やして、オリンピックを迎えたい」というニュアンスを感じるので、それなら泊食分離まで行かなくてもいいのでは?と思います。
個人的に思う解決策は、現在も行われている「一泊朝食付き(夕食なし)」「素泊まり(朝夕食なし)」を増やす、で十分。
増やすというか、もしプラン化されていないなら、プラン化する。
まだまだ準備不足の「泊食分離」よりは、「夕食なしプラン」こちらの方が現実的です。
あくまでも、小野川温泉の場合は、ですが。
山形県内でも、赤湯温泉や天童温泉、かみのやま温泉など、宿のキャパが大きく、飲食店が周辺にたくさんあり、歩いて行けるなら「泊食分離」のモデル地区としてアリだと思います。
マイナスをカバーするためなら、有効
ということで、「泊食分離」は小野川温泉ではまだ難しいという話をしてきましたが、積極的に取り組む理由があるとしたら、たった一つ。
人手不足のカバーです。
今、かつてない人出不足の旅館業界。
小野川温泉も例外ではなく、外国人を採用している宿もあります。
今後も人口減少していくわけで、人手不足解消は、容易ではありません。
田舎ほど厳しい。
そんなとき、宿の選択として「仲居ゼロ・厨房スタッフゼロ」を見すえた泊食分離は、アリかもしれません。
「仲居の採用がうまくいかないし、板前の採用もうまくいかないし、厨房機器も古くなってきたし…。」
厨房機器を買い換えるなら、いっそ宿泊のみにシフトする。
すると、掃除係とフロントのみの宿泊専用宿になります。
昼中心のシフトになり、スタッフ採用や管理もやりやすくなります。
ビジネスホテルのイメージですね。
同様に、食の受入先としての夜型施設へのシフトもアリ。
イメージとしては、レストランや居酒屋。
昼食と休憩ができる昼型施設もアリです。
イメージとしては、スーパー銭湯。
昼に予約なしで休める施設は、なかなかないですから。
こう考えると、人手不足を補うために温泉街としての分担(ワークシェアリング)に思えてきます。
そんな泊食分離は、田舎の温泉地にふさわしいかもしれません。
うちは、夕食専用。
うちは、泊まり専用。
うちは、朝食専用。
うちは、昼食専用。
みんなで引き算して、総合計で一人のお客様をもてなす。
一つの旅館に集中させず、あえて分散して温泉街を守る。
そんな泊食分離もありだなとブログ書きながら思いました。
私の思いつきにおつきあくださり、ありがとうございました。
久々の3000字越え。^^
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