AIが導く最高益の旅行会社『AIトラベル』

この記事は13分ぐらいで読めます♪読み応え十分!どうぞお付き合いください^^

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ふとした思いつき。ショートショートで

もしもAIが旅行会社を経営したら?

3世代でもラクラクのバリアフリー旅、
そして家族で落語を楽しんでほしい…
鈴の宿 登府屋旅館の 遠藤直人(@naaot)です。

星新一先生のショートショート好きとして書いてみました。
軽い気持ちでお読みくださいね。

・・・・・・・

「我が社は、今後一切の経営判断をAI(人工知能)に委ねます。」

株主総会で可決された決議のもと、CEOをAIとした新たな旅行会社が船出した。
取締役では、AIに指示を仰ぎ、忠実に実行する。

 

「それでは、みなさんのお望み通り、今期の利益を最大にする施策を発表します。」
ゆったりと自信に満ちた口調の音声が、AIから流れる。

「ほお。。。」
取締役たちのどよめきとともに新たな方針が画面に映しだされた。

AI

・・・

「それにしてもネット系の旅行会社って増えたよね。」
Oホテルの営業担当、A氏がつぶやく。

「ホントですよ。昔は、これを人間がやってたんですもんね。」
ネット担当のS氏が答える。

「あの頃は、まだ2社しかなかったらからね。人間でもできたけど。今やねぇ。。。」

「旅行会社の名前すら覚えられないくらい。プランなんか、多すぎてもうわけわかんないよね。」

「以前のまま、人間がやってたらトラブルしまくりでしたよね。テマヒマイラズのおかげですよ。」

S氏はネット担当。
実際の業務は、テマヒマイラズを用いたサイトの在庫管理だ。

ホテルにとって、在庫は有限だ。
在庫の客室を販売しつつ、満室でちょうど受付を締め切らなければならない。

一室でも多く売れてしまうと、オーバーブッキング。
部屋の数より予約が多くなる。
お客様に平謝りだ。

「テマヒマイラズをしっかり使いこなせば、1回の操作で全てのサイトを管理してくれます。
昔は、一部屋売れたら、全てのサイトを人間が手直し。
大変でした。
忘れたり、抜けたりしたら地獄でした。。。
今はテマヒマイラズさえ管理すればいいんですもんね。」

「テマヒマイラズを管理とかいってるけど、実際は、テマヒマイラズに人間が動かされているみたいなもんだけどな。」

「あ、確かにそうかもしれませんね。人間が忘れてると、お部屋が売れなくなりますもんね。」

ガチャ。
ドアを開けて入ってきたのは、経理部のN氏。

「Sさん、ちょっと教えてほしいんだけど。」

「どうしました?」

「昨年4月にお泊まりの2組のお客様。
ネット経由のお客様なんだけど。
まだ、代金が回収できていないみたいなんだよね。」

「え?昨年のですか?ちょっと調べてみますね。」

S氏がパソコンに向かって、しばらくすると…。
「あれ、でもデータが出てきませんね?
おかしいな。」

「ないわけないだろ。
すでにお泊まりなんだから。
お金は、予約前に旅行会社に支払われて、あとで振り込みされるはずだよ。」

「検索しても、ないですね…。
あれ?ちょっと電話で問い合わせてみますね。」

受話器を持って、旅行会社に電話をかける。
ガイダンスの案内に従って、サービスデスクを呼び出す。

「はい、AIトラベル 施設サービスデスクです。」

「すいません。昨年、お泊まりのお客様の件で…。
お支払いがまだなのにデータが見つからないんですよ。」

「いつのお泊まりでしょうか?」

「4月13日と25日の…。」

「ちょっとお調べしますね。
・・・。
そのご予約でしたら、丸一年が経過しておりまして、データが消去されております。」

「え?消去って?まだお支払いいただいていないんですよ?」

「規約をご覧いただくとわかりますが、ホテルからのご請求は、1年以内となっております。
それをすぎた場合には、自動的にデータごと消去されるシステムになっております。」

「え?請求しないと消えるんですか?1年で?」

「左様でございます。
規約改正の際にご同意いただいたはずでございますが…。」

「規約改正って、そんな細かいところまで読まずに『はい』って押しましたから。
1年って、厳しくないですか?」

「ご同意いただいた決まりですし。」

「合計で20万円近い売上ですよ。
なんとかならないんですか?」

「申し訳ございません。
規約に基づいておりますので。
私には、なんとも。。。」

「請求しなかったのは、こちらのミスですけど。。。
たった1年でっていうのはあんまりではないですか?
酷いですよ。」

「申し訳ございません。
規約に基づいておりますので。。。」

「わかりましたよ!もういいです。」

憮然として、電話を切るS氏。

「Nさん、申し訳ございません。
請求を忘れていて、支払いを受けられないそうです。」

「え?20万円?全額?
お客様が、泊まったのに?」

「そうみたいです。
規約とシステムで。
私のミスです。
申し訳ございません。」

・・・

「やりましたな。過去最高益です。」

AIトラベルの取締役会。
笑顔が並ぶ。

「経営判断をAIに委ねると決まった時には、どうなることかと胃が痛くなる思いでしたが、たった一年でまさか利益が6倍になるとは。」

「利益率の伸びが驚異的です。
8%が46%ですから。
まさにAI様様ですな。」

「笑いが止まりませんな。このビジネスモデルは。」

画面には、昨年発表された5つの施策が映し出されていた。

〜AIトラベル 今期施策〜

・ホテルの担当者が、簡単に1クリックで請求できるシステムの構築

・宿泊客からの支払いは全て事前のクレジットカード決済に変更

・ホテルからの請求期限を宿泊後、365日とする規約の変更

・期限を過ぎた場合には、宿泊データを消去。ホテルには支払わず、当社の売上に計上

・ホテルからのクレームに対しては、規約とシステムを理由に応じない

取締役たちに向け、AIからの音声が淡々と響いた。

「私たちAIと異なり、人間は忘れる生き物です。
365日以内に請求をしてくださいと言っても、忘れる。

これは、人間である以上、仕方がない。

その素晴らしい特性を活かすべく、規約を変え、システムを変えた。
システムはなるべく簡単にすることで、『こんなに簡単なのに忘れてしまった』と担当者に思わせる。

そして、万が一、請求ミスを棚に上げて、クレームを言うものがあれば、対応は人間にさせる。
相手を人間にさえしておけば、人間は満足しますからね。

どんなにクレームを言っても、規約とシステムを盾に応じない。
しばらくすると、人間は諦め、クレームを忘れる。

ホテルが請求を忘れれば忘れるほど、当社の売上は上がるのです。
宿泊手数料なんていう数%ではない。
宿泊料の全て、100%です。

ルールを明確に、やり方を簡単にしているのに、忘れる人間のなんと多いことか。」

これを聞いていた、一人の取締役。
施設サービスデスク部門のK氏が口を開く。

「たしかに売上は上がりました。
しかし、サービス担当は相次ぐクレームに疲弊しています。
退職者も増え、スタッフの入れ替わりも激しくなっています。

どうでしょう。
せめて、請求期限が切れる1週間前にホテルに対して『まもなく請求できなくなりますよ』というメールを送って、注意を喚起してみては?」

他の取締役たちから笑顔が消え、AIの答えに注目が集まる。

「そんなことをしたら、せっかくの売上がなくなってしまいます。
最高益を出したいと決めたのは、皆さんですよね。」

「ですが…。」

「知らせてある規約をきちんと読まない。
やるべき業務を1年も忘れる。
自分のミスなのに他人にクレームを言う。
クレームを言われ、気に病んで会社をやめる。

どれも人間らしくていいじゃありませんか。

やめる人間をかばって、売上を失う提案をするのも、実に人間らしいです。

しかし、みなさんが望んだのは、最高の売上と最高の利益。
AIは、それに沿った方針を示し、実現してご覧にいれましたよね。

いいですか?
みなさんは、人間なんです。

人間は、人間らしくしているのが一番なんですよ。」

 

 

 

 

・・・

「しゃ、社長!」

「どうした経理部長。」

「AIトラベルとの契約は、もうやめにしましょう。」

「回収不能ばかりで、まずいです。
資金繰りがショート…、ショートしそうです。」

「君、ショートショートって、小説じゃないんだから。」

「いえ社長、
事実は小説より奇なりです。」

 

 

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