旅館ブログ

バリアフリーはプロに②「2千万が1千万!劇的な発想転換」

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設計費用は無駄なのか?

シリーズ第2弾。

3世代でもラクラクのバリアフリー旅、
そして家族で落語を楽しんでほしい…
鈴の宿 登府屋旅館の 遠藤直人(@naaot)です。

貸切風呂完成記念。
作り手側からバリアフリーを考えるシリーズです。

旅館でリフォームする場合、2つの選択肢があります。
設計士を入れるか、入れないか?

入れれば、設計費用が施工とは別に発生します。
「大改造!劇的ビフォーアフター」は、この部分は番組側が負担していました。

入れなければ、施工の費用だけで済みます。
どっちがいいか、悩みどころです。

工事の規模や性質にもよりますが、今回の当館の貸切風呂に関しては設計のおかげでコストダウンできました。

実は、一番最初の構想段階では、「貸切風呂のために建屋を建てて、旅館とつなぐ」と考えていました。
総工費は、2千万円

「うーん、2千万円か。」
私としても悩みました。

でも、源泉の位置や当館の敷地、空いている場所などを考えると「それしかない!」とずっと思っていました。
毎日、宿にいるものがとことん考えてでした結論が、「2千万円かかるのは仕方ない。建屋を作らないと貸切風呂は無理!」でした。

ところが、設計士さんと図面を見ていて全く違う発想をいただきました。
「この壁とこの壁を壊せば、貸切風呂できるんじゃないですか?」

目から鱗とは、このこと。

設計士さんは図面を読み解くプロ

その場所は、倉庫と倉庫と男風呂の一部でした。
壁を壊して、スペースを作る。
男風呂の一部なので配管も簡単につなげる。

そして、費用は1千万円
半額で済みます。

金額的にも現実的になり、本格的に貸切風呂づくりが動き出しました。
これがなければ、あきらめていたと思います。

動き出しは、設計士さんの功績といえます。
もちろん、設計費用はかかりましたが、それ以上のコストダウンになりました。

デザインのチカラは侮れない

もう一つ、設計士さんにしかできないのがデザインのチカラ。

「病院や介護施設のような機能だけの設備はイヤ。
誰もが使ってみたくなるような、憧れるようなデザインを。」

無理難題をお願いしていました。

バリアフリー特別室もそうですが、デザインがカッコイイ。
この部屋は、車いすに関係なくてもリピートされる方も多いお部屋になりました。

貸切風呂も、同じようにワクワクするデザイン。

カラフルなタイル

正直、最初デザイン案が来たときは、ビビりました。
「こんな色がバラバラで大丈夫?」

正直、「もっと落ち着いたデザインがいいんでは?」と言いかけました。

が、バリアフリー特別室や手がけられた他のお宿のデザインを見ても、いつもカッコよかったので、「きっとうまくいくのでは?」と信じてみることにしました。
と書くと、いい感じですが、正直、かなり不安でした。

パッチワーク風のタイル張り

やられました!

できあがるとなんとも印象的で味のあるタイルになりました。
隣り合うタイルが微妙に違い、自然界の「ゆらぎ」を感じるような。

遠目で見ても癒されるデザイン

今回の一番の目玉である、滑り台型のスロープが印象的になりました。
そして、横の面と縦の面で色が違うので、視力が弱くても段差がわかりやすくなっています。

2次元から3次元を組み立てる

今回の工事で、さりげなくも驚かされたのが、湯口でした。

私は、工事などは、決して丸投げせず、自分でも考えてプロに意見をぶつけて、一緒に考えてもらいます。
今回、自分では発想できなかったのが、湯口。

ずっと図面を見ながらお湯があふれる場所を作りたいけど、それをすると湯船がせまくなる、と悩みました。
スロープと壁と入り口をとって、あふれる面をとると湯口をつける面がない。

そんな悩みを解決したのが、立体の力でした。

あふれる面の上に湯口

3次元で考えるとなんということはないんですが、図面だけ見ていると一向に答えが出ませんでした。
設計士さんは、図面という2次元を見ながら3次元が想像できている。
これは素人では、できない特殊能力。

プロはすごい!とつくづく思いました。

そんなわけで今回の設計を担当したのは、倉橋建築計画事務所の竹内慶和さんです。
倉橋建築計画事務所さんは、とにかく旅館のクライアントが多い。
そして、バリアフリーの案件も数多く手がけてらっしゃいます。

故・倉橋英太郎先生は、リフォームの匠として「大改造!劇的ビフォーアフター」に出演されていたほどです。
リフォームは、発想が命。
制約条件が多い分、「思いつき」がないと局面を打開できません。

ビフォーアフター風に作ってみました

「思いつき」のおかげで2千万円が、1千万円になりました。
さらに、県からの補助をいただき、それも半額にできました。

バリアフリーにお悩みの旅館経営者の方は、こちらもご覧ください。

山形県のバリアフリー改修補助金

山形でなければ、こちら。

観光庁のバリアフリー改修補助金

どちらも、1,000万円の工事に500万円の補助がつきます。
そんなわけで、敵に塩を送るならぬ、敵に補助金を送る。
上杉だもの。。。

みんなで活きたバリアフリー改修を。^^

著者情報

1976年、山形県米沢市生まれ。福島大学経済学部を卒業後、㈱旭テック(現・旭ブレインズ)に勤務。その後、オーストラリアでの1年間の放浪生活、那須温泉・山水閣での研修を経て、2004年、鈴の宿 登府屋旅館にUターン。宿の仕事のかたわら、小野川温泉のまちづくりに注力していた2011年、東日本大震災を経験。震災後は、米沢の温泉旅館の連携を模索。1か月後には、「温泉米沢八湯会」を組織化し、義援金を集め、プランを作り、新たな切り口で米沢の価値を高めている。2013年、代表取締役への就任を機に「車いすでも安心して過ごせる宿」を目指す。「お客さまは、旅館ではなく旅行に来ている」という発想から『車いすで米沢を旅する本』を編纂。車いすでも安心して旅できる地域づくりを行っている。また、宿の宴会場では、不定期で自主セミナーを開催。講演テーマは、「リピーターを生み続ける仕組みづくり」「小野川温泉・米沢八湯のまちづくり」「補助金・マスコミ・ソーシャルメディア活用法」「燃料は、捨てる温泉熱!ヒートポンプで灯油ゼロ」など。自身の経験を公開しながら、他地域からの視察も積極的に受け入れている。